【USER’S VOICE】外部インタビュアーとの15年。企業の「言葉」を引き出すパートナーシップ


「ソフトバンク」グループやサイバーセキュリティ大手の「ラック」での勤務を経て、2023年にコミュニケーション戦略支援企業「ブラン・ニュ」を設立した山本和輝氏。15年以上にわたり、社内報や企業メディアの制作において、外部インタビュアーとして当「エーアイプロダクション」の伊藤を起用してきました。今回は、長年のパートナーシップを通して見た外部インタビュアーの真価について、伺いました。(聞き手:二階堂ねこ)
想像を超えたインタビュー手腕で深みのある記事に
――伊藤とは、いつ、どのようにして出会ったのでしょうか。
私がソフトバンクグループの「ソフトバンク コマース&サービス」(現:SB C&S)という会社で広報室長に就任した直後でした。社内報に力を入れようという話になり、記念すべき第1号には経営者のメッセージを載せることになったんです。
しかしいきなり問題に直面しました。それは、年商何千億という規模の会社の社長に、誰がインタビューをするのかということ。社内の人間では役不足感が否めませんし、そもそも身内どうしでは新しい話も出ないだろうということは、想像に難くありませんでした。困り果ててPR会社に相談をもちかけたら、「エーアイプロダクションの伊藤さんを紹介します。インタビューのプロですから」と言われたのです。
伊藤さんの第一印象は「感じのいい人だな」といった程度でした。しかし、実際にインタビューの場に立ち会って、想像を超える手腕に舌を巻きました。社長が心から気持ちよく話をしていて、どんどん興味深い話が飛び出してくる。1時間ほどのインタビューでしたが、終わった後も社長がニコニコと上機嫌だったのが印象的でした。
――それまでのインタビューとはどう違ったのでしょうか?
さまざまなメディアの方が取材に来られましたが、基本的に自分の記事を作るための決まった順序で質問を進めていくインタビュアーが多いものです。でも伊藤さんの場合は全然違いました。ライブ感をもって、話の流れの中から、社長の思いをどんどん引き出してくれたんです。
結果として、社内報のインタビュー記事は大成功。当初3ページと想定していた紙面を4ページに拡大するほど、充実した内容になりました。普段の短いスピーチや報告中心の全社集会などでは伝わり切らない社長のお人柄をはじめ、社員が本当に知りたい「会社がどこに向かっているのか」「なぜそこを目指すのか」といった本質的な部分を、しっかりと示すことができたのです。これは外部インタビュアーならではの成果であることはもちろん、やはり、特に伊藤さんのインタビュー術があったからこそ書けた記事だと思います。
――15年のお付き合いの中で、ほかにも印象に残った事例はありますか。
その後ラックに移ってからも、オウンドメディア「LAC WATCH」の制作で協力いただいています。特に印象深かったのは、弊社の社長と他社の経営者との対談企画です。
経営者同士の対談は往々にして脱線しがちなもの。しかし、伊藤さんはフラットな立場から、対談全体をうまくコントロールし、かつ双方の経営者が気持ちよく話せる場を作ってくださるんです。一方が話しすぎることなく、もう一方にも適切なタイミングで話を振るといったことですね。その結果、想定以上の深い内容が聞ける対談になることが度々ありました。
また、外部のインタビュアーの場合、例えば重大な経営判断の背景や、失敗から学んだことなど、社内の人間からはやや聞きづらいテーマでも、自然な形で話を展開できます。身内どうしでは「知っているはずだから」という前提で説明が省略されがちな部分も、基本的な部分から丁寧に引き出していただけるんです。結果として、新しい気づきのある記事になるんですね。
そのうえ、伊藤さんは人の口を滑らかにするのがお上手ですから、インタビュイーからは「これはオフレコなんですが…」といった本音もどんどん飛び出します。もちろんそのまま文章にはできませんが、その本質を汲み取って伝えられる形に置き換えて織り交ぜると、記事がぐっと面白くなるんです。
「心のゴーストライター」と歩んだ15年
――長年の広報業務を通じて、外部からインタビュアーを起用する価値をどのように感じていますか。
本当の会社の姿、等身大の価値を伝える役割を担う広報は「会社の良心」と言われています。これは伊藤さんとの仕事を通じて、私が強く実感してきたことでもあります。同じ目標にむけて、ともに記事を作り上げる過程を通じて、伊藤さんは単なるインタビュアーではなく、インタビュイーの心の中にある、まだ整っていない思いや考えを引き出し、届けたい人に伝わる言葉に置き換えてくれる「心のゴーストライター」のような存在だと感じています。
――会社を移られても継続して依頼していただいた理由をお聞かせください。
単なる発注者と受注者という関係を超えた、パートナーシップがあったからだと思います。私が見てきたインタビュアーの中でも、伊藤さんのような方は珍しいんです。会社対会社の関係ではなく、担当者個人としっかり向き合い、絆を作ってくれる。だからこそ、お互いの立場やフェーズが変わっても、一緒にビジネスができます。
2023年10月に、私がブラン・ニュ株式会社を設立した際も、真っ先に伊藤さんに報告に行きました。60歳を超えての起業という点に純粋に感動してくださって、本当にうれしかった。現在は共同でイベントを企画するなど、新しいチャレンジも始めています。そういった個人的なパートナーシップが、結果的にお互いのビジネスの発展につながっているのだと思います。
これからの時代に求められる「言葉の通訳者」
――ブラン・ニュ株式会社としては、今後どのような展開をお考えですか。
現在は主に、コミュニケーション戦略の支援を行っています。多くの経営者が「自分は何を提供する存在なのか」をうまく表現できずに悩んでいます。この点が明確になると、発信力も格段に上がります。ブラン・ニュでは、広告やコーチング心理学のメソッドを組み合わせて、特に個人事業主や小規模事業者の方々が発信するメッセージ作りをサポートしています。特に50代、60代の同世代の経営者の方々のお役に立てる可能性を感じています。
面白いのは、インタビューというスキルと、私が学んでいるコーチングは、人との対話を通じて、その中にある本質的なものを引き出していくという点において、親和性が非常に高いんです。伊藤さんにも協力していただいて、いいサービスを作っていきたいですね。
――今後、エーアイプロダクションに期待することはありますか。
エーアイプロダクションさんは、しっかりとした会社組織でありながら、伊藤さんのもとに様々な人が集まることで、堅苦しくない柔軟な集まりを作っているように見えます。これはこれからの組織のあり方のひとつのモデルになるんじゃないかと注目しています。
今後も単なるインタビューの受発注という関係ではなく、お互いの強みを活かしながら新しい価値を生み出していけるパートナーとして、一緒に成長していけたらと考えています。