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【連載コラム】奥様が2割増しで綺麗に見えるキッチン

2021年09月10日

日本における唯一無二の『キッチンデザイナー』として活躍中の和田浩一氏が“理想のキッチン”について語る連載企画。今回は奥様が綺麗に見えるキッチンについて持論を述べます。

 皆さん、こんにちは。今回は、キッチンデザイナーの私が提唱する「奥様2割増し計画」についてお話ししましょう。以前、専業主婦の方で一日最大で3時間キッチンに立っているという調査結果をお伝えしました。であるならば、使い勝手の良いキッチンにするのは当たり前のことですが、それだけではなく、奥様が普段より2割増しで綺麗に見えるような(笑)、そんなキッチンにしたいというのは、すべての夫が抱く当然の願望であると思われます。私はそれを実現するために、「奥様の背景を整える」「照明を整える」「邪魔なものをなくす」という3つの方策をご提案しています。
 現在、対面キッチンが主流となっているので、まず奥様の姿越しに見える壁面の素材や色、扉割りや目地などの線を整え、さらにビルトイン機器や家電製品を整えます。そして主役である奥様にスポットライトがあたるよう、照明計画にもこだわります。さらに、奥様をうっとり眺める旦那様の視界の中にある水栓金具や浄水器、シンク周りの邪魔ものを排除します。“台所洗剤の容器越しに見る奥様ってどうよ?”という話です。私は今から20年前に、自宅のキッチンのシンクの内側に収納ポケットを作り、さらにノーブランドの容器に洗剤を詰めかえて納めてみました。すると家族や友人からの評判がすこぶる良い。いちいち洗剤を詰め替えるのが面倒くさいという声も聞こえてきそうですが、自分の奥さんが2割増しで綺麗に見えるのなら、わずか30秒くらいの作業などいとわない、そんな夫の役割のひとつとすれば良いでしょう。
 「バックスプラッシュ」という言葉があり、本来は水栓金具の向こう側の壁面を指しますが、これが今、世界のキッチンデザインのトレンドをリードしています。その風景を整えようという流れの中で、キッチンパネルのように色気のないものを貼っている場合ではありません。であるならタイルを貼ろうという話になりますが、例えばレンジフードの左右の目地の位置が違うと気持ち悪い。でも、パッケージ商品では目地の位置まで調整ができません。
“そこまで気にする人はいる?”と疑問を持つ方もいるかもしれませんが、人は綺麗に収まっているものには気づかず、汚く収まっているものは気が付くという傾向があります。だから5年くらいたって、掃除をしているときに突然、あれ…目地が…と気づく。そして「和田さん、このキッチンの目地が一直線に通っているけれど…」って電話をいただくのが何よりもうれしいですね。これはキッチンに限った話ではなく、どこもかしこもきれいに納まっている家は、知らず知らずのうちに当たり前の心地よさを生んでいます。いつまでも経っても自分の奥様が美しくあり続ける、そんな当たり前の幸福が感じられるキッチンを作るのが私の役割だと自覚しています。

(豊かな暮らしを創るコミュニティ・ペーパー「禅CLUB」3月号に掲載)

和田 浩一 /株式会社STUDIO KAZ代表
キッチンデザイナー・インテリアデザイナー
1965年福岡県生まれ。オーダーキッチンのエキスパートとして、空間デザイン、キッチンデザイン、プロダクトデザインやグラフィックデザインなどに携わる。1994年の事務所設立以来800件以上のオーダーキッチンに携わる。
キッチンスペースプランニングコンクールや住まいのインテリアコーディネーションコンテスト、グッドデザイン賞など受賞歴多数。
2014年~キッチンアカデミー主宰。1998年~2012年バンタンデザイン研究所非常勤講師、2002年~2006年工学院大学専門学校非常勤講師、2014年~東京デザインプレックス研究所非常勤講師。
著書に『キッチンをつくる―KITCHENING』(彰国社)、『世界で一番やさしいインテリア』(エクスナレッジ)、
『世界で一番やさしい家具設計』(エクスナレッジ)他。

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