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ビジネスインタビュー&コミュニケーションに関する考察と実践(1-2)

2020年12月19日

年間500人もの心を開いてきたインタビュアー伊藤が、その経験の中で見出してきた、あらゆるビジネスで使える即効性の高いコミュニケーション・テクニックについて、体系的にまとめていきます。

note掲載
https://note.com/aip_ito/n/nee45dd9b59c2

理解するための技術、理解を超えた共感を生む「絶対的肯定ヒアリング」

ヒアリングの技術論を並べ立てる前に、相手の話を聞くための基本姿勢について述べたいと思います。
最近、あまり耳にしなくなった「イエスマン」という言葉があります。人の言うことに何でも「はい、はい」と答え、無批判に従う人を指すネガティブ表現ですが、最近の若いビジネスパーソンを見ていると、あまり人に合わせることのない人のほうが成功していたり、決して黙ったりせずに、一言も二言も多い人のほうが社内の評価も高いように思えるのは気のせいでしょうか。イケてるベンチャーの社長もマイペースな人が多いですね。
昭和の時代から会社勤めをしている、40~50歳代の私たち世代の人間からすれば、最近の若い方々の自由奔放な姿勢にいつも驚かされっぱなしですが、「イエスマン」はこの先、どんどん不要になっていくのでしょう。しかし、私たちインタビュアーは仕事として「イエスマン」になりきる必要があります。相手の話は全肯定。目線は上でも下でもなく、なるべく同じ高さに持っていて肯定する。そこに一点の曇りもありません。もちろん誰にだって好みや考え方、こだわりもあります。しかし、仕事として人の話を傾聴し、理解する過程においては、自分の色は真っ白の状態にして、心から相手に同化するように心がけます。
なぜなら、全肯定姿勢で傾聴することで、単なる理解から共感が生まれるからに他なりません。この職業的共感を生むことで、話が弾んでいく。先ほど説明した“相手が勝手にしゃべりだす、そんなスイッチを入れて、そのサイクルを回し続ける装置”となる瞬間です。人は、自分のことを“わかってくれる”と感じさせる人に喜んで話をする生き物です。ここでいう、“わかってくれる”とは、単なる理解では物足りないレベルで、「その話はわかるけれど…」と末尾否定ではなく、頭だけでなく心から理解して、完全無欠に同調してくれる、すなわち“共感する人”に話したがる傾向があります。愛好家のコミュニティが盛り上がり、絆が強くなるのも、マニアックな共感に満ちているためです。経験上、共感を装うのは難しいです。それよりも、共感値は多少不足していたとしても、どこか一部分でもいい、心からわかってくれる人と会話を楽しみたいと思います。

そしてもうひとつ重要なのは、自分が共感していることをしっかりと言葉や態度に表すことです。表面的な共感は見え見え、“わかる、わかる”と言葉でいうのは簡単ですが、これもまた、相手にはすぐに見透かされてしまいます。“職業的共感”を覚えるためにはどうしたら良いか。もちろん、初めての相手とモニター越しで話をする前に、ある程度の下調べはしておくでしょう。年齢、出身地、卒業大学、キャリア、現在のポジションなど、スペックを集めてインプットしておくのも良いかもしれませんが、私の場合、それらのスペックから想像を膨らませながら、相手の立場を理解するようにしています。
例えば、私と同世代、50代の管理職で部下が数人いたら、「モノが売れない時代、販売部門のマネージャーは社内で肩身が狭いかな。部下は3人、若い社員ってどう扱っていいのかわからないのではないか…」みたいに、その相手の立場になりきる役者のような感覚です。最初からプロファイリングしてシミュレートするのは難しいかもしれません。先入観を持たずにフラットに話を聞きはじめ、そのうちに相手の話に染まりながら同化していくほうが現実的かもしれません。
できれば、“一旦受け入れる”といったレベルでなく、最初から最後までその人の生き方と同化して話を聞きます。中途半端に共感しようとしても、どこかで“この話はなんか違うな”と思い始めたら、自分の気持ちにバイアスがかかってしまいます。すべてを受け止めて肯定することで、その価値を理解して、それを認めて、素直に褒めてあげると相手はものすごく喜びます。だからまずフラットでいましょうと、考え方の偏りのない真っ白な状態で話を聞いていきます。“一旦、第三者目線で受け止めるか”という姿勢では、褒め方が嘘っぽくなります。それよりも完全に同化するほうが、「おお、なるほど! すごい!」と自然に反応ができて、その嘘偽りのない反応こそが相手を喜ばせます。

ところが、どうしても聞き手が共感できない場合もあります。私も大手から中小まで、様々な規模の会社の社長にインタビューを重ね、それなりに組織マネジメントのあるべき姿がイメージできるようになっています。もちろん、職業柄、先入観は捨ててお話をうかがうのですが、どうしても疑問が生じることもあります。その時に「え!? そうなんですか?」と非難めいたり、意見をするような口調で聞くと、相手が気分を損ねることがあるので要注意。いったん「そうですよね!」って肯定口調で受け止め、次に自分を謙らせながら、「勉強不足ですみません。素人で門外漢の僕なんかは、こういうふうに考えがちなんですが…」と、下から意見を言うような感覚で質問をします。そうすると、相手は「バカだな、こいつ」と思いながらも持論を展開してくれます。“どことなく疑問を持ちながら肯定する”くらいのスタンスで聞くのもありかと思います。

とにかく私たち聞き手は、その話は正しいか、正しくないかをジャッジする立場にはありません。もっと言えば、どの価値観が正しくて、正しくないとか、若い人は正しくて、年寄りは正しくないとか、そういう基準もありません。それを自覚しながら、あくまで相手に話をさせるように仕向けることが重要だと自覚しています。
そして、もう一点言えるのは、先入観や偏見を持っていないほうが、自分の理解力もアップします。相手や話の内容に偏見を持たないほうが、どんな話でもインプットできるし、偏見がないから正しく理解ができます。その正しさの基準はどこにあるのか? 私が考えるにそれは、インタビューを受けてくれた人にとっての“正しさ”であって良いと思います。その先、世の中でどのような価値が認められるか、それは私たちが判断することではありません。

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