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インタビュー論「論理的な聞き方って?」

2020年01月13日

年間500人以上対応のプロ・インタビュアーとして、数多くの経営者、文化人、タレント、学者、医療従事者、アスリート、専門家、ビジネスパーソンの話を深掘ってきた伊藤秋廣(株式会社エーアイプロダクション代表)が、初対面の人の心をわずか数分で開き、気持ちよく論理的に話を引き出すテクニックを、すべて大放出いたします。(聞き手:近藤由美)

聞く側が論理を正していく感覚

近藤さん(以下敬称略):前回は、現場のネタをキャッチして、インタビューに入る前のつかみとして使うって話をお聞きしました。伊藤さんはそれを、インタビュー前の準備として重視している?

伊藤:
そうです。実は、事前の準備でネットの記事ばっかり読んで、先入観を持ってしまうのが一番怖くて。話に新鮮味がなくなると、こっちも反応が悪くなる。「この話はネットで読んだわ…」ってなるとあんまり面白くない。っていうか、面白がって聞けないから、良い反応ができないんですよ。やっぱり「え!!マジっすか? すごい!」っていう反応を、ツクリじゃなくできたほうがいい。対話重視なんで、自分の反応を生でさらしちゃうみたいな感覚ですかね。媒体としてではなく、インタビュアーさんがちゃんとおもしろがって聞いてくれているんだね、というのを伝えた方がいいじゃないですか。

近藤:
実際、あんまり読まないんですか?

伊藤:
基本、読まない。これね、良し悪しあるけど(笑)、今のところ僕は読んでない。一人くらい、事前に言われたことがありましたよ、「厳しい人だから、読んでおいたほうがいいよ」って言われて、ビビッてその人の記事は読んだけど(笑)。そういった例外をのぞけば、事前にどういう人なのかはあまり調べずに行って新鮮な気持ちで聞いていますね。

近藤:
私、心配性だし、読んじゃうんですよ。話慣れている人ほど「また言ってる」って事を話して、「それ聞きました」って気持ちになっちゃう。でも、インタビュアーである私が対しているのは目の前の人で、記事の中の人ではないからってことですよね。

伊藤:
そうです。良いこと言いますね。ネットの記事読んでいると、次こういう質問だよねって流れが見えてしまう。自然の話の流れに沿った質問をしてしまいがちですよね。だから既存の記事は見ないで、今、聞いた話から分岐して違う質問に行っても全然いい。中には、もう理路整然と論理的に、いつも話すことの内容も流れも一緒っていう人もいるけれど、ほとんどの人はそうじゃない。最終的な記事で編集者が手を入れていることが多いわけじゃないですか。誰かが手を入れた記事を鵜呑みにしちゃいけない。それは編集者の論理で整えられているだけ。

近藤:
なるほど。

伊藤:
だから、イチから、白紙の状態からインタビューをはじめて、誰にも作られていない素の相手と対峙する。そしてイチから論理的に話を聞いていく。

近藤:
聞く側が論理を作っていく?話し手ではなくて?

伊藤:
そう。さっきも言ったとおり、僕自身も含めて、完全無欠で論理的に破綻なくしゃべる人ってそれほどいないと思う。例えば、「私は子どもが生まれたので、環境が良い鎌倉に移り住みました。子どもと一緒に家族で暮らして遠距離で通勤しています」と語る人がいたとします。

次の文脈で、「地域貢献をしたいと思って、自分の実家であるお寺の一部を改装して寺子屋を始めました」と言う。そうすると、前段と後段の間が論理的につながらない。さらっと聞けば何でもない話だし、そのインタビューイーもいつも同じことを話しているから、すーっと話すけれど、僕はそこにひっかかっちゃう。

子どもと移住したのは、わかる。でも普通の人は、地域貢献のために、何かしたいと自然に思うもの?なんかきっかけがあるでしょう?この間の思考の論理が不足しているのでは?と指摘します。

「鎌倉に来たのはわかります。子育てにいい環境ですもんね。そこで、地域貢献したいとおっしゃいましたが、なぜ地域貢献したいと思ったんですか?お子さんを育てる中でどう思ったんですか?」と聞くと、この間の論理の溝みたいな部分を埋めることができます。

論理的な聞き方ってたぶんこういうことだと思います。話を聞きながら、要点をつないでいくと、どっかでジャンプしちゃっている箇所が見つかる。時系列で聞いていって、小学生時代から急に大人になっちゃう感覚に近い。

何で?何で?何で?って掘っていけば、必ず違和感を覚えるはずなんですよ、「ここが足りないよ!」って。本筋から脱線して話し始めちゃう人もいるじゃないですか。そういうのも絶対に逃さない。「話をちょっと戻しますよ」って言って、本筋に戻していきます。

近藤:
その誘導をしないといけないですよね。

伊藤:
そうです。この誘導は重要で、これこそが話を聞くときの絶対的な肝なんですよ。引き戻してあげれば「あ、なるほど。そうだ。そこは説明しませんでした」って正気に返って、改めて話してもらうと、「なるほど!それはすごくわかります」って共感できる。肝心なところを外すと、聞いていても「あれ?」ってなる。足りない!たどり着けない!って。そこの分岐点だけメモをする。

近藤:
冷静に。

伊藤:
そう。話に夢中になっているように見せながら、あくまで冷静に。僕って、ほとんどメモは取らないんですよ。2時間くらいでノート1ページくらい。

一回一回、論理の棚卸をしながら聞く

近藤:
本当ですか? テープ起こししないですよね?

伊藤
テープ起こしはしますよ。

近藤:
テープ起こしするんですか! 例えば、それが400文字くらいの原稿であってもテープ起こしをしますか?

伊藤:
しますよ、基本は全部します。なぜかというと、後で聞き直すと、思い込みとかあるんですよ。“あ、俺はこっちの方向で聞いてた”みたいな感じで。だけど、もう一度落ち着いて聞き直すと「あ、違う!」って、そこでニュアンスを正すというか。あ、違うわ、この人はこういう意図で話している、っていうのが絶対あるんで。

とにかく、インタビューをしている時は、メモはちょこっとしかしないで、全身全霊で真剣に聞く。「これだけは、ちゃんと聞いておこう」というところは聞き直して、論理が飛んでいるところはメモして、「言っていることがわからない」「論理飛んでる」、とは言えないから、「正しく理解したいんですけど」と言って、もう1回聞く。話を聞いているときは、絶対にそれにだけに集中する感じです。

たかが400文字くらいの文字量だと、論理不足とか、執筆に影響はないかもしれないけれど、僕の持論としては、水道水と一緒だと思っているんですよ。源流に近い太いパイプに話のネタがチョロチョロって感じだと、蛇口から出てくる液体の濃度が薄い感じがする。これだけしっかり、いっぱいのネタがあると、濃度の濃いものが出てくるから、たとえわずか400文字でも、1時間の話の論理を崩さず漏れなく話を聞くと、どこから切っても論理の乱れがない記事になるような、そんな感覚にしたい。

話している人の言っていることに矛盾がないように正しながら、しかもそのときは真剣に聞いて、論理の欠落がないように聞く。論理の欠落がないように聞いてあげると、向こうも話しやすくなるんです、絶対。例えば1時間のインタビューだったら、その中で3、4回ブレイクを入れてこれをやります。

「お子さんが生まれたんで、鎌倉に引っ越しました。そこで地域への貢献活動をしている人に出会ったから、自分も何かできないかと思って寺子屋始めました」っていうことですよねって、対話の中で一回一回、論理の棚卸しをする。

次に何をしたんですか? そこからどう考えたのですか?って聞くと、相手も話しやすいんですよ。ここまでの話は「こうで、こうで、こうで」って、一回整理してあげてから、次の質問をする。これが論理の棚卸し。
そうすると、僕が相手の話を正しく理解していることを示せるじゃないですか。

それを繰り返しているとニュアンス違いを正しながら話を聞くことができるから、自分自身も理解がしやすい。しかもインタビューの中で、軌道修正ができるから取材の失敗がない。話の真意を確認して、次はこう考えてって順番を整理して、それを繰り返しながら、論理を正してあげれば、記事を書いた後に「それ、俺が言ったこととは違う!」ってトラブルにはなりにくい。

近藤:
人って話す時、あやふやになりますもんね。

伊藤:
それを第三者が聞くと、「ここが足りない」「あれ?大学の時はどう思ったんだっけ?」って抜けるんですよね。それを戻してあげて。それに脱線もする。脱線したら本筋に戻してあげて。

近藤:
そこ大事ですよね。でも、どうやって戻す?

伊藤:
そこははっきり言っちゃいますよ。「ありがとうございます、おもしろいですね」って言ってから、「では、話を本筋に戻しますね」って、身振り手振りで“こっちに戻す”的なパフォーマンスを加えて笑いながら本筋に戻す。そして、またそこでも論理を整える。

「さっきはこういう話をして、こういう話をして、こういう風にされたからこうですね。
じゃあ、次はこう考えるんですか?」ってやると、必ず話は元に戻ります。どっかに行きっぱなしで次の質問にいくと、どんどん本筋から離れたところで話が進行しちゃたりもするんで、絶対に本筋に戻してあげないと。これはこまめに何回もやります。

近藤:
そこ、遠慮して言いづらいんですよね。

伊藤:
でも、そうすることで、向こうも話しやすいですよね。しかも、こっちが真剣に聞いているし、ちゃんと理解しているよ、って示すことにもなるんですよ、絶対。悪い話ではない。「私はこう理解している」って言葉にすると、そこで「いやいや違うよ」と修正してくれて。で、「すごくよくわかりました!」みたいな感じにしてあげると、「あ、わかってくれたんだ」ってなる。絶対うれしいんですよ、相手は。

反応がまったくなくて“こいつわかってるのか、わかってないのか?”っていう微妙な人に話してもおもしろくないじゃないですか。だから「この人、俺の言っていることちゃんと理解してくれている、価値をわかってくれている、言いたいこと理解してくれるんだ」って伝わるメッセージを全身から放ってあげるんです。そうすると必ず最後には、「そうです、その通りです」となる。

近藤:
聞きながら、整理する役割でもあるってことですね。

伊藤
そうです。どちらかというと、インタビューでは論理的に聞くことが一番大事なんじゃないかなと思うんですよね。それで向こうが話しやすくなるし、考えも整理できる。

近藤:
そこが友達としゃべっている時とは違いますよね。

伊藤:
おっしゃる通りですね。

近藤:
だからプロのインタビュアーの存在価値があるっていう話ですね。
(次回に続く)

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