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インタビュー術コミュニケーション営業術フリーランサー独立ノウハウ
2020年04月11日

フリーランサーに伝えたい、一人で戦うための自己防衛的営業術(Vol.4)

40歳で異業種から独立。まったくコネも実績もない状態から一人、コツコツ営業活動を続けてきた株式会社エーアイプロダクション代表・伊藤秋廣が、12年にわたるフリーランス時代の経験を交えながら、その営業術について語ります。

――前回のお話を聞いて、自己ブランディングって、作り込んでいく過程よりも、維持するほうが大変ですし、重要だなって思いました。

そうですね。前回記事を公開してから少し間が空いたので、もう一回、おさらいをすると、ブランドを維持するためにはまず実力を磨くって話ですね。インタビューって失敗ができないし、やり直しがきかない仕事です。著名な経営者や文化人が忙しい中、せっかく時間を作ってくれて、たくさんの関係者が調整して、このシチュエーションがあるわけですから、絶対に失敗できません。

余談ですが、大手新聞に掲載する記事広告の取材って、本当にたくさんの関係者が列席するのですよ。出稿先となる新聞社の広告局はもちろん、大手広告代理店、僕のお客さんである製作会社、そしてインタビューイーが大会社の社長だったら、お付きの人がいる。広報とか社長室とか取り巻きとか、とにかく大ギャラリーの中、僕だけがしゃべるってめちゃプレッシャーですよ。絶対に失敗できないじゃないですか。

それどころか、営業的に考えたら、“ちゃんとインタビューできたね”っていうのは当たりまえの話で、平均点周辺じゃなくって“ずば抜けてすごかった”って思わせないと関係者の印象に残らない。自分は他の、“記事を書くためにインタビューをするライター”に負けないって意識を強く持って、僕は“インタビューをメインにしているインタビュアー”であって、記事を書くのはメインストリームじゃない的なノリで立ち向かうわけですから、もう普通のライターとは一線を画する!みたいなイキオイと自意識の固まりみたいな状態になっている。

だから多種多様な仕事を積極的に受ける、たくさん仕事を受ける、質と量を意識して仕事を選ばずにやってきました。年間500人っていう枕詞を維持するために、ちゃんと取材人数を記録して、それをモチベーションにする。もちろん売り上げも記録する。これはモチベーションもさることながら、営業戦略にも使えるデータなんですよ。

例えば、去年の今くらいって?って見比べて、“もうすぐ、あの会社からあの仕事が来るな”って振り返り、先回りして「今年もよろしくお願いします」ってメールを投げておきます。実質的な年賀状。ちゃんと意味のある年賀状。これは一般的な営業活動の一環ってイメージです。で、営業活動に加えて広報活動も必要で、ひとりプロダクションみたいな僕の場合、なるべくお金をかけないで広報活動しなきゃってことで、SNSを活用しようって考えました。

FacebookもTwitterもインスタもLinkdInも全部やる。一応、自分なりに分析して、このSNSにはこんな感じで書こうとか、こう見せようとか戦略を練るわけですね。プライベートなことを中心に書くんだけど、そこにちょっと仕事のことをいれるとか。ほどよいバランスで。写真は重要なんで、愛犬と一緒に写っている写真とか(笑)、あとは仲の良いカメラマンと一緒に仕事するときには試し撮りモデルになって、良さげな写真を送ってもらってSNSに使っていい?とか、撮影者をちゃんと紹介してあげながら、いわゆる宣材写真として活用させていただきました。

会ったことのない人に友だち申請はしないけれど、できる限りお会いしたお客さんとかインタビューを受けてくださった方とつながって、ほぼ毎日、SNSを更新する。要するに、基本的には僕を知らない人に告知するための広報活動ではなくって、知っている人とつながって告知し続ける感覚です。

さらに商談であった人にもできるだけつながっておく。毎日、いろんな仕事やっているなってわかると、そのうち声をかけてくれるんですよ。毎日書いていると、目に付きますから、ライターとかインタビュアーが必要な場面になったら僕のことを思いだしてくれるんですね。だから、メールじゃなく、メッセンジャーでくる。あ、そうだ。連絡しておこう、みたいな衝動なのですかね。

一方で、意外にも初対面の人も事前に僕のSNSを見るんですよね。僕がインタビューするって情報が先方に渡ると、みなさん、“どんなヤツがくるんだ?”って検索するんです。こういう人がインタビューにくるんだー、へー。著名人とかやってる。なんか料理好きで奥さん大事にしてて、感じ良さそうとか。毎日、取材に出ていてお客さん多そうってことは、信頼できるのかな、腕がいいのかなって思ってもらえる。初対面なのに「SNSみましたよ」って言ってもらうこともけっこうあります。

要するに実績と人間性をアピールするのが僕的なSNSの使い方で、ブランディングを虚像にしないというか、しっかり人間味を見せて親しみやすいイメージを発信しておくって感覚ですね。けっきょく、お会いしてお話をする商売なんで、こんな人ですよ、話しやすいですよ、良さそうな人でしょ?感は出すべきかなと。

かといって、間違っても“オレはすごいんだぞ”みたいな、大物感を出したら絶対にだめ。嘘はもちろんだめだし、虚像を作りすぎてもだめってことです。“程良く、仲良くできそうなプロ感”を出すっていうか、“使い勝手の良さ”を表現するんですね。ブランディングが先行しすぎて大物感だして、実力と乖離していくのは絶対アウトじゃないですか。実力とブランド力をうまく連動させながら向上させる感覚がよくって、それを僕はSNSで埋めながら発信していく感覚ですかね。

既存のお客さんから「伊藤さん、大物になっちゃって頼みづらいよ」って冗談めいていわれることもあるけど、「なに言っているんですか。見せるのが上手なんですよ、僕」って返しておきます。でも、そういいながらもどこかで応援してくれる。そんなお客さんが多いですね。“駆け出しの頃から仕事を出してあげていた伊藤が、こんなに成長したんだ”って思ってもらって、それに対して“お客さんのおかげですよ”って、ちゃんと心から思って言葉にする。それもオフィシャルとプライベートメッセージがある意味入り交じっているSNS発信が有効なんですよね。

とはいえ、やりすぎには注意というか、あまりにも尖っている風に見せちゃって、逆にいかがわしいなって思われない工夫は必要で、“なんかこの記事、嘘くさいなー”とか、“ちょっとナルシスト入っていない?”って思わせない、ぎりぎりの境界線をねらっていく。嘘くさく見せないためには、ちゃんと納得できる根拠を書かないとダメかなって思います、きちんと論理的に。

どうしてたくさんのお客さんからオファーをいただいているのか?説得力ある根拠を出さないで、「心を開くインタビュアー」とかキャッチコピー優先で打ち出しても、なんかいかがわしく映る。あとは顔写真を出さないのもなんか…。後ろめたいことあるの?ってなる。

“ファン化”っていうと大げさですが、僕のことを好きになってくれる、応援してくれる人を一人でも多く作るって言うのがフリーランスにとってのサバイブというか、生き残るうえでもっとも重要なことだと思うのですよ。そういった意味でも僕は、若い人、現場の人と仲良くなって、上にはあまり、こびへつらったりしない。

結局、上の人って損得で考えて、僕みたいな立場の人間なんかいつでもばっさり切れるじゃないですか。しょうがないですよ。組織にいる大人たちはそうなる。でも一緒に現場やると仲間になれます。スタートアップもそんな感じで、お客さんだけど仲間っていう感覚になれると絆が深まるじゃないですか。

やっぱり好きになってもらわないと、腕がよくても、“あいつ嫌いだから”ってなったら次はないし、他のお客さんなんか絶対に紹介してくれない。そういった意味で、大物面しちゃいけないってことですよ。現場の若い人が「このおじさん使いづらい」って話になっちゃうと、未来がないですよね。若い人との関係は将来につながる大切な資産ですよ。お偉いさんはあと数年で権威が失墜しますが(笑)、若い方はこれから偉くなっていきますからね。

僕を応援してくれる人はどんどんお客様を紹介してくれる。そうなると新規開拓をしなくてもある程度のベースとなる仕事量が確保できるようになります。毎月の連載仕事ばかりではなくて、不定期でもいいし、一年に一回のおつきあいでもいい。そこを手を抜かずにしっかり対応すると、数年後にまとまった仕事がくるとか、そんな感じで拡大していきます。

ただ、それでも新規開拓は好きだからやり続けますよ。だって、実績も増えて、強みが明確になって、資料も充実してきて、わかりやすいアピールポイントも増えたし、相手のお役に立てるって、絶対に失望させないって自信を持って提案できますもん。「伊藤秋廣」っていう商品が大好きだし、信頼もしている。自分が好きでも何でもない、信頼していない商材を売らなきゃいけない営業マンってつらいですよね。

まあ、営業を続ける理由はもうひとつ、リスク分散って意味合いもあります。あまり一社に集中依存するのって危険だし、相手にもプレッシャー与えるからあまり良い関係とは言えませんよね。常に数社のメインお取引先と、仕事量はそれほどないけれども仲の良いお客さんを配置する布陣を意識していきます。

それと、もう一点、自分のノウハウを棚卸しするのも大切ですね。体系化しないとノウハウとはいえなし、再現性がないとお客様は価値を感じません。いつも安定したインタビューで成果を出すには、まぐれの連続ではなく標準化しないと。

ちょうどあるお客さんからインタビュー勉強会を頼まれたタイミングで、しっかり整理して、それから随時、追加してブラッシュアップしています。ちゃんと行き当たりばったりでなく、しっかり考えているんですよって示すことで信頼性も高まりますから。

根拠ですよ、すべて。僕のインタビューが評価されているのは、こういう根拠があるからというのを経験の中で分析して明文化する。それは、例えば仲間を作ったり後継者を作ったりなど、ポストフリーランスっていうか、ひとりで戦うことに限界を感じたり、次のステップに進もうと考える将来にもつながる話です。

もうこの辺になると、誰もがエーアイプロダクションは疑いもなく、個人事業主の屋号ではなく、会社だと勘違いする人ばかりが増えてくる。誰も、ひとりのフリーランサーがぶん回しているって思いもしない。営業戦略としてはうまくいった感はありますが、でも、しょせん請負は請負ですよ。その域を越えるのはひとりでは難しい。次のステップはやっぱり請負打破だよなって思いつつ、この壁を突破するのがなかなか…。でも、僕はそこで甘んじたくなかったんですよ。その辺の話はまた次回。