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【連載コラム】プロ・インタビュアーがインタビューのテクニックをすべて語り尽くす

2020年09月15日

年間500人以上対応のプロ・インタビュアーとして、数多くの経営者、文化人、タレント、学者、医療従事者、アスリート、専門家、ビジネスパーソンの話を深掘ってきた伊藤秋廣(株式会社エーアイプロダクション代表)が、初対面の人の心をわずか数分で開き、気持ちよく論理的に話を引き出すテクニックを、すべて大放出いたします。(聞き手:近藤由美)

インプットにもアウトプットにも語彙は必要

 

近藤さん(以下敬称略):

前回まで色々とお話をうかがってきたのですが、やっぱり伊藤さんの経験値がものをいう、そんな世界なのかとも思いましたね。

 

伊藤:

それは、そうかもしれません。僕、年間500人とかインタビューするじゃないですか。数って重要っていうか、やっぱり数って強いじゃないですか。大きさも長さも、人数も、何でも数とか量とかがモノをいう。アスリートの取材とかするじゃないですか。練習量とか、当たり前だけどハンパない。国家だってそうですよね、規模とか、数とか、例え統制とれてなくても結局、数の論理なんですよ。経済的にとか、戦い的にとか、圧倒的な差があれば、あらゆる意味で大きい方が勝つ。

 

僕らの仕事的でいってもそう。例えば語彙。この話はインタビュイーからの受け売りなんですけれど、おもしろいなって思ったのは、語彙って、写真の解像度と一緒って言い方する人がいて。解像度が高いが高いと画像も鮮明になって、再現性とか表現力がアップする。語彙がいっぱいあればあるほど、話ができるんじゃなくて、理解力が上がるって言うわけ。あ、なるほど~と思いましたね。

 

相手の話を聞いていて、この言葉わからない、難しい言葉だなって思っちゃうと、そこで理解が止まってしまうし、世界観が見えづらい。こっちにいっぱい語彙があって、あ、そういう意味ねってわかったほうが理解できる。“インキュベーションとか何だっけ?”“あとでそれを調べればいいや”ってなると、そこで一瞬理解が止まる。それ以上の突っ込んだ質問ができなくなってしまいます。

 

今、年間で500人のインタビューをやっていると、たくさん新しい言葉を学ぶ。それで会話の解像度みたいなものが上がっていくというか、理解力が格段に上がってるような気がします。やっぱり、数ってすごく大事だなって。そうなると、最初の頃に話した「俯瞰して見る」っていうのもそうだし、「流れを見る」のもそうだし、数があればあるほど比較対象が増えていきますよね。

 

近藤:

引き出しが増えますもんね。

 

伊藤:

そうなんですよ。それを意識したいなって思って、数にはこだわり続けているんですよね。人数もそうですが、あとは業種とか分野の数とか。特定分野だけではなくて、多種多様な分野に対応することで、言葉の数や理解力が物理的に上がる。向こうが言っていることが見えてくるというか。

 

そうなってくると、表現する時、いわゆるアウトプットの段階でも、その人が言っているニュアンスとか思いの温度に近い語感の言葉を用意できるようになります。例えば語尾でも、「こう思っている」ではなくて「決意した」とか。言葉だけでも相手の気持ちに近づけられる。こちらがたくさんの語尾を持っていれば、ニュアンスを近づけられる。「考えた」のか「決意した」のか「思った」のか。そこに気持ちのコントラストがあるではないですか。

 

そういう気分にぴったりな言葉を用意してあげるのも必要なんで、インタビューの音源をもう1回聞いて、“ここ熱いな”って思ったら、例え本人が「思った」と言っていても、あえて「確信した」に変えたり。

 

表現する言葉だけではなく、聞く時にも語彙、経験、分野、その人の特徴とか、話すテンポとかも含めて、数を持っておくことは必要なのかなって思うのです。これってやっぱり経験ですよね。

 

空気ではなく、状況を読む

 

近藤:

伊藤さんが今回、用意してくださったレジュメの中で気になった言葉があって。「空気ではなく状況を読む」って、どういう話なんですか?

 

伊藤:

これはですね、インタビューで一番大事なのは、今、相手がどう思っているか?を察する力だよって話ですね。今、この時に相手はどう思っていて、どんな質問を欲しているか?とか、ここはもうちょっと話したいのか、とか、そういうのは読みたいなと思っていて。それを「空気ではなく、状況を読む」と表現していまして。

 

例えば、用意していた質問が5個あったとします。時計を見たら、あんま残り時間がない。もう3つ目の質問いかなきゃって、バスっと切るんじゃなくて、3番目の質問の話題を相手がもっと話したそうにしていたら、もうちょっと話させてあげて、もう十分かな、と思った段階で「すみません、話が面白すぎて、良い時間になっちゃいました」とかなんとか言って「ちょっとスピードアップして次の質問にいっちゃいませね」ってやる。

 

近藤:

気の利いたコメントを入れて…。

 

伊藤:

そうです。そんな感じで、“一緒に記事を作っている”“協力してもらっているんだ”という空気をところどころで見せていく感覚かもしれないです。どうですか?

 

近藤:

ここまで聞いていて、伊藤さんの意識の高さというか、違いを感じました。ライターじゃなくてインタビュアーだ!ってことですよね。

 

伊藤:

そうそう。そこはね、そう思ったほうがいいっすよ。なりきるのが重要ですよ、「俺はインタビュアーなんだ!」って。なので、書いた原稿に赤字が入って戻ってきても、“俺、インタビュアーだから”って自分に言い訳する(笑)。

(次回に続く)