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【連載コラム】プロ・インタビュアーがインタビューのテクニックをすべて語り尽くす(第十回)

2020年10月24日

年間500人以上対応のプロ・インタビュアーとして、数多くの経営者、文化人、タレント、学者、医療従事者、アスリート、専門家、ビジネスパーソンの話を深掘ってきた伊藤秋廣(株式会社エーアイプロダクション代表)が、初対面の人の心をわずか数分で開き、気持ちよく論理的に話を引き出すテクニックを、すべて大放出いたします。(聞き手:近藤由美)

必要なのは演技力?

近藤さん(以下敬称略):
ここまで聞いていて、伊藤さんの“自分はインタビュアーだ!”っていう、マインドセットが重要だっていう話、よくわかりました。だからこそのこだわりが仕事の中に散りばめられているんですね。

伊藤:
ありがとうございます。この話はインタビュアーっていう仕事だけでなく、様々な仕事に適応できるっていうことを伝えたいんですよね。医療であろうと、飲食であろうと、経営者であろうと。あらゆるコミュニケーションワークに活用できるよう体系化するのが目標です。

若いライターさんって、年輩の経営者のインタビューは苦手とか言うじゃないですか。あとはよくわからない分野には対応できないとか。僕も化学会社の研究職にインタビューしますけれど、決して知識があるわけではない。でも、これまで説明してきたような手法を用いてすべて適用してきました。話をするのは相手であって、僕に知識が必要なわけではありません。

必要なのは、相手が言っていることがどれくらい価値があるのか?をキャッチしてあげる力。平たくいえば、相手が自慢していることの価値を理解して評価してあげたほうがいい。研究職の人が話しているときに。「こういう研究をして、こんな発見をした」って話した時は、「そのジャンルは詳しくないんですが、それを研究して特許を取ることは、世の中的にどれくらい価値があるんですか?」って、ずばり聞いちゃえばいい。そしたら気持ちよく話してくれますよ、「それはね」って。必要なのは僕の評価ではなく、僕の背後にある社会の評価。だから、世間一般的にそれがすごいことなのかどうかっていう基準は持っていたいし、わからなければ聞いちゃえばいいんです。

だって、みんな、自分が誇れることを聞いてもらいたじゃないですか。だからこっちは深い知識なんて必要ない。一般常識として、世の中として、この業界は好調だよねとか、厳しいんだよねとか知っていればなんとかなります。

近藤:
時々、自分と同じレベルの人に聞いてもらわないとって思っている人っていません?

伊藤:
いますね。でも、僕は当たったことなくて。最初から勉強不足ですみませんって言っちゃから。インタビュアーでいろんなジャンルやっているという見せ方をしていて、そのジャンルに特化しているわけではありません。僕は一般読者代表です。あなたのすばらしい話を一般の人たちに広く伝えていきましょうよ。そのサポートをするのが私です、ってスタンスなので。最初に相手の心を掴んで、話していいかなって思わせるから、そういう雰囲気になったことはないですね。

わからなかったら、わからなくていいんですよ。だから、話を聞きに来たって開き直っちゃう。教わりたいから来た。こっちに知識があったらわざわざ聞きに来ませんよって(笑)。正しく価値判断できないですけれど、「それはすごいことなんですね!?」って正直に聞くと「知らないの!?」って面白がって話してくれる。だから先に仲良くなっておくのが重要かな。

近藤:
私、最近の一番の衝撃は「何引き出してくれるの?」って言われたことです。女性経営者で、元は自分も聞く立場にいたっておっしゃってました。それ言われて、私は心のシャッターが降りました。そういう人には切られていいと思って、「私はコピーライターみたいにおっしゃることを2倍にも3倍にもして表現できませんから」って言っちゃいました。

伊藤:
たまにいますね、そんな人。僕はそういう時は、淡々と進めちゃうかな。あとは、その時の空気感がわからないけど、「おっ!それは恐れ入りました…。逆にインタビューされちゃいそうですねって笑いに持って行ったり、
あるいは、役不足かとは思いますが、一生懸命やりますんで」的に、極端にへりくだった物言いをしたり。

僕が良く言われるのは、「これ読んでもらえればわかるから」って。ポンと資料を渡されたり。「いや、いやいやいや、そうなんですけれども、私もインタビューを仕事にしておりますんで、少し生のお言葉いただいてよろしいですか?」という感じで入るかな。

近藤:
90%は伊藤さんの人間力ですよね?(笑)。

伊藤:
っていうか、見せ方ですよ。この人おもしろそう!?みたいな、キャラづくり。

近藤:
ビジネス共感ではないけれど、仕事として、人としておもしろい人だと思ってもらうために演じる、というと大げさですか?

伊藤:
演じる!ですよ。そう思います。普段からこういう人間というよりは、スイッチを入れます、インタビューの時に。目的は笑ってもらうこと。お笑い芸人と一緒で、気の利いたこと言って、笑ってもらって、楽しんでもらうっていうのが目的になっている。

すごく緊張する場でも、絶対笑わせたよう!って思いますから。笑わせ方にもいろいろあるではないですか。偉そうな人には、ちょっと自分を卑下したり。「こんな年齢ですけれど、そんなことも知らないんです…」とか、いろいろやりますよ。

効果的な褒め方って?

近藤:
その点では、私もおばさんになってよかったと思います(笑)。

伊藤:
あとはキャラづくり。僕、若い頃にバンドでボーカルやっていたんで、ライブでステージに上がっているのと同じ感覚だと思ってるんです。インタビュアーになりきって、笑わせて、全然、普段の話し方と違いますよ。すごく動くし、演技、演技。演じればいいんです、インタビュアーを。

オフレコですが、例え相手が嫌な人でけっこう興味が薄くても、興味があるいうフリをすればいい。わざとらしくないラインを見つけておかなければですが、めちゃくちゃ褒め過ぎてもダメで、褒めのポイントが大事。「えっ!そこ褒める!?」ってことじゃなくて、褒めポイントを大げさじゃなく誉めるっていうのはあって、それは経験上なんですけど、
「年間500人くらいインタビューしてるんですが、初めて聞きました、こんな話は!」っていうと喜ぶ。「うそー?!」と言いながらも喜ぶ。

「それは自分の経験、この仕事10年くらいやっているんですけれど、そういう考えで経営されている方はなかなかいないです」、とか。そうすると、「勉強不足だね」とは言われない。褒め方ってけっこう大事ですよ。ちゃんと論理的に、根拠を示しながら誉めないと。

近藤:
褒めポイントを見つけて…。

伊藤:
褒めポイントは絶対必要で、ネット上でいつも言われていることじゃなくて、オリジナルなポイントを見つけたいんで、掘って掘って、この辺を褒めるのがいいじゃないかなって、ちょっとジャブを打ってみる。上辺のことははみんな知っているじゃないですか。年商◯億とか、そんなことはみんな知っていて、みんな褒めている。

だから、できれば記事化されていないことを誉める。「学生頃からそんなこと考えてたんですか!?それはすごい!」って、自分の本質に近いところ、人間性を褒められることが一番うれしいはずですから、表面的な実績よりも、たぶん。

「そうなんだよ、俺は若い時からそう思っていたんだ」って、そんな気持ちの良い部分を見つけて、そっと触れてあげる。本質を褒めると、人間って喜ぶじゃないですか、いつも言われていることじゃなくて。

近藤:
そこを気づいてくれたんだ!ってことですよね。

伊藤:
そうそう、でもそれは掘っていけば絶対出てくる。掘っていけばオリジナルの考え方が出てくるではないですか。そこじゃないかな、それを褒める。みんな褒めているところは褒めない、「へ?」って、流す。

近藤:
掘る作業を怠っちゃいけないってことですね。

伊藤:
そうです。掘って、その人の生身の部分っていうか、社会人って鎧を着てるというか、いろんな顔を持ってる。ビジネスマンとして、とか。そういうのを、みなさん戦略的に小出しにして、自分のすごさを示すために使っている。それは褒められるためにそうしているから、褒められてもうれしくないんですよ、当然のことだから。

そうではなくて、人間として、地頭を褒められるとうれしいし、“裸の俺を理解して褒めてくれている”ってわかるとうれしい。だからいっぱい話してくれれば、だんだん相手を裸にできるじゃないですか。表面的な、台本通りのこと言われても褒めるポイントはないんですよ。それより「そんな子どもの頃からお母さんのお手伝いして!!」とか、そんなことでもうれしい。そういう感覚です。

意識というか演技、演じるんですよ。だからエンターテインメントなんですよね、インタビューって。「インタビューされて楽しかった」「おもしろかった」って言われますもん。「気持ち話せてよかった」って。そこ目指しているし、そういうふうに言ってくれる人は多いから。

だって、理解してくれる相手に全部話して、スッキリして、相手が面白がって聞いてくれて…それは喜ぶに決まってますよ。それが、この仕事のおもしろさ。だから、第一印象で“感じ悪い”と思われたら終わりなので、こうしてさわやかな笑顔(笑)で、いい人っぽさを前面に押し出しているんです。
(次回に続く)