【サクッと読めるショートコラム】外部目線を持つインタビュアーの活用
日本で3本の指に入るプロインタビュアー伊藤秋廣が、インタビューに関するあれこれを書き記すショートコラム。第一回は「外部目線」について。
取材をしていると、ちょいちょい“もったいない”と思うことがあります。例えば、佐渡の米農家を取材したときに、山間の棚田を満たす水が毎日、清らかな豊潤な湧き水によって入れ替わっている状態を見て、それだけで“美味しいお米ができそう”なんて感想を述べると、彼らは照れくさそうに「こんなことは昔からやっているので特別なことではない」と言います。
その日の夕方、日本海に沈みゆく美しい夕陽をバックに浮かびあがる浜辺の干藁のシルエットがあまりにもフォトジェニックだったため、スマホで写真を撮っていたら、地元の方は「こんなに景色が良いとは気づかなかった」と言います。日常的で、かつ身近にあるものだから気がつかないし、当たり前すぎて“たいしたことではない”と思ってしまうのでしょう。でも、外から来た私たちにとってはとても新鮮で、“おもしろい!”と思えるコンテンツでした。
企業価値や文化もそうですよね。組織に属していては気づかないこともあるし、価値を感じないから発信意欲もわかない。ネタはたくさんあるのに、「ブログやSNSで発信できるような情報はない」と言い出したり。せっかく、磨けば光るようなポテンシャルを持っているのに目を向けず、逆にコンサルや代理店にお願いして、会社の良さや文化をコピーライティングとして創作してしまう。それって金銭的にももったいないし、実態とかけ離れてしまって、本当の魅力を発信することができないような気もします。
とはいえ、組織内にいる人が発信しようとしても業界常識にとらわれ、専門用語を乱発しすぎて何かとわかりづらい。しかも記事の中で自社を褒めるとさすがに手前味噌、提灯記事っぽくなってしまい、読者にとって何の魅力も価値もないコンテンツになってしまいがちです。やはり、外部の人間、もしくは外部の目線を持ちうる人が社内を見渡し、価値を発掘してわかりやすく発信すべきでしょう。
もちろん、私のようなインタビュアーにご依頼いただいてもけっこうかと思います。なぜなら私たちインタビュアーの価値は、社内に外部目線を持ち込むことです。しかもマスコミ・報道機関ではないので、第三者目線とはいえ、批判めいた客観性ではなく、あくまで取材を受けていただく、もしくはインタビューのオファーをいただいた企業の応援団として、第三者=客観目線だからこそ気がつく魅力を掘り出して発信していく。そんなスタンスでインタビューをしています。