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A.I.P. journal
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インタビュー中に必ずやっていること

2023年11月13日

私がインタビュー中に必ずやっていることは何か?それはどんな効果があると考えているのか。参考までに私の経験を元に、持論を展開させていただきます。

インタビューって何かといったら、すなわち言葉を置き換えていく作業だと思うのですよ。相手が業界特有であったり、自分の世界の中だけで通用する言語を使ってお話をするなか、それを記事として読むのは我々一般ピープルなので、相手が話している業界のお話を、きちんと翻訳して言葉を置き換えてあげる必要があるわけですよね。

 

この置き換えって、インタビューの後の執筆作業に必要な作業であって、執筆を伴わないインタビューやビジネスヒアリングでは必要がないのではないかと思われる人もいるかと思いますが、そんなことはありません。そもそもインタビューでもっとも重要なのは質問力ではなく理解力だと思っていて、鶏が先か、卵が先かではないですが、相手の話を深く理解していなければ的確な質問を投げかけることもできません。この理解度をインタビュー中に確認するために必要なのが、この言葉の置き換え作業だったりしますし、さらにヒアリングの場面で相手の話の筋を整え、理解するうえでも、この置き換え作業は重要だったりします。

 

人って、思ったほど論理的には話せないものです。どんなに頭のいい人でも、完全無欠に理路整然に論理的になんて話せない。シナリオが用意されたインタビューだったら別ですが、私インタビュアーに期待されているのは、シナリオを読ませることではなくて、その人が日常的に、顕在的に潜在的に思っていること考えているものを言語化してもらいたいわけですから。

 

ではどうすればいいかというと、私たちが論理的に聞いてあげなくてはいけないわけですよね。論理的に聞くとはどういうことかというと、実に単純なことなんです。例をあげながらお話ししますね。「私は東京で出産しました。そして実家に帰りました。群馬のお寺でワークショップを始めました」みたいな話があったとします。皆さんはもうお気づきかもしれないけれど、この一連の流れのなかには、大きな論理の欠如がありますよね。なぜ群馬なのか、それは実家だからということはわかりますね。でも、なぜお寺でワークショップなのか。

 

話している本人は事実を述べているわけだから、とても自然な流れで語っていますけれど、聞いている側からすると、理路が欠落しているわけです。何でお寺なのか?なぜワークショップなのか?欠落した理路を埋めないといけない。ここは聞き逃さないで、ガタガタの理路をちゃんとなめらかにする必要があるのですね。漏らさず、逃さず、その場で質します。どうしてなんですか?と質問することで、実は私の実家はお寺なんです、と話が引き出せます。昔のお寺は地域の人々が集まる場で、寄り合いの場所だったわけで、それを再現したいという話になるわけです。なるほど、理路を質したことで理解が深まりますよね。相手の見方さえ変わります。実家がお寺だと継ぐのかな?とか、ちゃんと伝統を意識する人なんだなと。

 

話を元に戻しますと、人は絶対に、ダーッと話していくと、どこかに抜けているところがあるものなんです。でも、勢いよく、気持ちよく話しているのに中断なんかできません。一旦、とにかく全部、話を聞くんです。そして理論の欠如を探していきます。そして、欠落しているところをメモするんです。相手がひと通り話して一呼吸空いたところで、その瞬間に「もう少し、詳しく聞いていいですか?」と、欠落しているところを埋めるような質問をするのです。

 

これは相手にとってもいいことだと思っています。私たちはインタビューするとき、基本的には読者側の目線に立っているわけですよね。その話をするんだったら、この話もあの話もしてもらったほうが、より読者理解が深まるし、話しているあなたも魅力的に映るはずですという観点で、助言をしながら論理を埋めてあげるのです。「素晴らしいお話なので、もう少し詳しくお聞かせください」といえば、相手も悪い気しないはずです。

 

そして冒頭に述べたように、インタビューの最中、相手の話の内容を自分が理解しているかどうかを確認するためにも、その場で言語化するのは重要です。間違った理解をしていたら、その先、とんちんかんな理解のまま的外れな質問を繰り返しこの人、本当にわかっているのか?と私たちインタビュアーに対して不信感を抱くようになり、僕らが理想とする相手との信頼感のなかで実施されるインタビューとはほど遠い行為になってしまいます。

 

お話がひと区切りついたところで、「今、お話されたことはこういうことで合っていますか?」と必ず聞くんですね。難しい言葉で話されていらっしゃっても、それを私は大筋で理解していますよ、と示しながら、「こういうことですよね?」と一般的な用語に置き換えてあげる。すると相手は、「そういうことだよ」っていってくれるので、そこで齟齬がないということがわかります。私の理解と相手のいってることに齟齬がないと確認できるから、その後の作業も当然、スムーズになりますよね。原稿を書くときに一般的な用語に置き換えやすくなるんです。「話したことと違うことを書いているじゃないか」とはいわれなくなるし、読者にもわかりやすい形で表現ができるようになります。このようにインタビューという、そのたった一度の貴重なリアルタイムの中で必ず、相手が話していることをその場で理解して、置き換えて示してあげることは重要です。

 

ときどき、話が広がりすぎて、本筋とはまったく違う方向にいってしまう人がいますよね。そういうときには、「その話は不要だから、辞めてください」なんて失礼なことはいえないですから、ずっと話をさせるんですよ。やっぱりインタビューという時間を楽しんでもらいたいし、気落ちよく話してもらいたいではないですか。だから途中で話を遮るのは絶対にNG。もちろん限られた時間のなかでインタビューを終えなくてはいけないので、ある程度、時間配分は意識しなくてはならないので、事前に相手に「これだけの時間のなかで取材をしたい」ってことを伝えるべきですが。

 

それでも楽しくなって、夢中になって話がワーッと行ってしまう人はいるんですよ。でもそのほうが話の内容も面白いし、いい話も出てくるけれども、時間内に聞かなくてはならない話があるわけですから、やはり本筋に戻してあげなくちゃいけない。本筋に戻すときに、分岐したところに戻す必要がある。ですから、話が向こうにいったなと思ったら、分岐したところをメモしておくのですよ。そしてワーっといっちゃった話が止まった瞬間を狙って、「先ほどこういうお話をされたと思うんですけど、この先はどうですか?」って質問をすれば、自然に話が軌道に戻って進んでいきます。ただしちゃんと聞いたことを理解して、言語化して投げれば相手としても話を戻しやすいし、こっちとしても内容の確認もできる。双方にとって必要なことですよね。

 

人によくいわれるのが、「それって相手を誘導してるんじゃないの?」ってことなんですが、インタビューで誘導するなんてできません。話しやすいように本筋に戻す作業をして、足りない部分を埋めているだけです。ちゃんと話を理解していると示したうえで、言葉を自分なりに置き換えて示して、分岐点に置いてあげているんです。すると相手は話しやすくなる。誘導ではなく、サポートとかガイドなどの表現がしっくりきますかね。

 

あとは、この言語化確認を繰り返すことで、自分がうまく話せているとか、内容がちゃんと私に伝わっていることを、相手が実感できますから、そういった意味でもとても喜んでくれるし、反応もいいですよね。私は相手の話を聞くとき、作りじゃなくて、本気で面白がるのですね。だって人の話って、どんな話でも面白いじゃないですか。めちゃめちゃ反応するし、めっちゃ面白いと本気でいうから、相手もどんどん話してくれるんですよ。そんなことを繰り返して、楽しんで話してもらって、最後に締めのいい言葉をいってもらうために私の方から総括をするんですよね。お話を聞いた自分の感想をそこで入れるんです。こういうお話が素晴らしかったし、そういう考え方が広がっていくことで社会は変りますねとか、自分なりの感想を伝えて、最後に結論を聞くんです。相手がストーリーを作りやすいように土壌を整えてあげて、話をしやすくして盛り上げるんです。

 

そうすることによって、インタビューに同席している人も話が分かりやすくなる。周りで見ている人たちも、体系化されてわかりやすくなった話を完全に理解できるようになる。話している人も楽しい、その場で聞いている人も楽しいという、知的エンターテインメントな時間になるのです。それはもう派手にやってあげるんです。ショータイムです。インタビューという特別な時間をみんなで楽しんでいただきたいのです。

 

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