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デザイン
2020年01月18日

生活様式の変化に伴い、人々のニーズも変わる

日本における唯一無二の『キッチンデザイナー』として活躍中の和田浩一氏が求め続ける“理想のキッチン”とは? そのこだわりについて聞いてみました。

 皆さま、はじめまして。まずはキッチンデザイナーという職業の定義について説明させてください。世の中にキッチンデザイナーと呼ばれる人は恐らく一人二人しかおらず、もしかしたら日本では唯一の存在かもしれません。では、世の中に流布するキッチンをデザインしている人は誰か? まずメーカーで商品としてのキッチンをデザインする人、そしてオーダーキッチンの設計者、さらに輸入キッチンのプランナーがあげられると思いますが、僕はそのどこにも属していない。直接お客様からご依頼をいただいてキッチンをデザインし、どこの工場で作ってもらうか?というところまでコントロールする、建築の世界でいえば、設計事務所の立場にあります。大きな違いは、この3パターンの人たちが商品としての、『設備としてのキッチン』をデザインするのに対し、僕は空間全体をデザインするという点です。以前から「キッチンはインテリアなんだ」と主張し続けていましたが、最近になってようやく、同じような感覚を持つ専門家も登場してきました。インテリアなのだから、お客様のライフスタイルから発想する必要があるのは当然です。
 ある調査によると専業主婦の方は一日最大で3時間キッチンに立つのだそうです。例えば3人家族×24時間=72時間のうち3時間をキッチンの中で過ごすということは、残りの69時間は家族が外からキッチンを見ていることになります。なのでキッチンを含むLDK全体をコントロールする必要があり、それがキッチンデザイナーの役目と自覚しています。
 そもそも日本のメーカーはキッチンを「設備」というカテゴリで流通。カタログに並ぶアイテムの中から好みの色やIHか?ガスか?を選択します。それに対してヨーロッパにおいては、キッチンは家具の一つとして扱われ、ショールームの見せ方ひとつとってもインテリアの発想から提案しています。日本のそれとは違い、それぞれのキッチンを中心としたストーリーが見えてくる、そんな工夫がされています。人間のライフスタイルは当然、十人十色。家族の数だけ、各々の生活背景があります。最近は、「ダイニングは不要」というお客様もいます。普段はキッチンカウンターで食事をして、週末はゆっくりソファで食べたいという方も増えています。スターバックスコーヒーがソファ席を用意し始めた頃からでしょうか。そういった要望が寄せられるようになりました。だからインテリアショップでも、座面から10〜15センチメートルほど高いソファテーブルが売られるようになったのでしょう。
 このように人々の生活様式が少しずつ変わってきて、キッチンのあり方も変わってきています。リビングとキッチンの境がなくなり、極端な話、この空間すべてをキッチンと呼んで良いのではないか、そんな自由な発想でキッチンを考えたいという人が増えてきている、そんな時代になった気がします。

(豊かな暮らしを創るコミュニティ・ペーパー「禅CLUB」1月号に掲載)

和田 浩一 /株式会社STUDIO KAZ代表
キッチンデザイナー・インテリアデザイナー
1965年福岡県生まれ。オーダーキッチンのエキスパートとして、空間デザイン、キッチンデザイン、プロダクトデザインやグラフィックデザインなどに携わる。1994年の事務所設立以来800件以上のオーダーキッチンに携わる。
キッチンスペースプランニングコンクールや住まいのインテリアコーディネーションコンテスト、グッドデザイン賞など受賞歴多数。
2014年~キッチンアカデミー主宰。1998年~2012年バンタンデザイン研究所非常勤講師、2002年~2006年工学院大学専門学校非常勤講師、2014年~東京デザインプレックス研究所非常勤講師。
著書に『キッチンをつくる―KITCHENING』(彰国社)、『世界で一番やさしいインテリア』(エクスナレッジ)、
『世界で一番やさしい家具設計』(エクスナレッジ)他。