【連載】使う人の数だけ、求める機能性が違う
日本における唯一無二の『キッチンデザイナー』として活躍中の和田浩一氏が求め続ける“理想のキッチン”とは? そのこだわりについて聞いてみました。
今回はキッチンの機能性についてお話ししたいと思います。多くのメーカーのCMや広告では、機能性については「お掃除楽々」「収納たっぷり」のふたつだけしか語っていません。それは私がこの世界に入った30年前から1ミリも変わっていません。機能といっている割には、シンクとコンロの大きさは決まっているし、その位置も自由にならないキッチンです。人によっては洗って刻んで炒めて盛り付けるという流れを作りたいのに、コンロと壁の間は15センチしかなく、ここには皿を並べることさえできません。引き出しや扉の大きささえも決まっていて、わがままを言うことさえできないのです。
元来、キッチンは使う人に合わせてレイアウトされるべきです。だから我々オーダーキッチンをプランする人間は、まず徹底的なヒアリングから始めます。どういうライフスタイルを送っているか、どんな料理が得意かなど、暮らしの中のキッチンの位置付けをしっかりとイメージできるようにします。そもそも住まいづくりのご要望をお聞きしていると、8割が生活の中心であるキッチンの話で占められていると言っても過言ではありません。どう暮らしたいのかと問えば、自ずとキッチンの設計につながっていくのです。
(豊かな暮らしを創るコミュニティ・ペーパー「禅CLUB」2月号に掲載)
和田 浩一 /株式会社STUDIO KAZ代表
キッチンデザイナー・インテリアデザイナー
1965年福岡県生まれ。オーダーキッチンのエキスパートとして、空間デザイン、キッチンデザイン、プロダクトデザインやグラフィックデザインなどに携わる。1994年の事務所設立以来800件以上のオーダーキッチンに携わる。
キッチンスペースプランニングコンクールや住まいのインテリアコーディネーションコンテスト、グッドデザイン賞など受賞歴多数。
2014年~キッチンアカデミー主宰。1998年~2012年バンタンデザイン研究所非常勤講師、2002年~2006年工学院大学専門学校非常勤講師、2014年~東京デザインプレックス研究所非常勤講師。
著書に『キッチンをつくる―KITCHENING』(彰国社)、『世界で一番やさしいインテリア』(エクスナレッジ)、
『世界で一番やさしい家具設計』(エクスナレッジ)他。