社会的ニーズの高い不動産プロジェクトに直接投資
これまでにないまったく新たなコンセプトを持った、“P2P型金融”という画期的なシステムを構築し、世界的な注目を集めているクラウドリアルティ社。代表取締役の鬼頭武嗣氏に、サービスの特徴や仕組みについてうかがった。
――「クラウドリアルティ」とは?
私たちにとってのお客様とは二通りあります。ひとつは不動産に関わる事業をしていて、それに必要な資金を調達したい人です。もうひとつは、そのようなプロジェクトに投資・出資として“関わり”を持ちたい人。その“関わり”とは、資産運用という観点もありますし、その事業自体に興味があるから関わりたいなど、様々あります。その二通りのお客様を資金という観点でみると、資金が不足している人と、資金に余裕がある人です。その資金についての需要と供給のマッチングを行い、お互いのニーズをぶつけて解決するというプラットフォームを提供しているのが、私たちクラウドリアルティという会社です。
――投資者はどのような価値を感じている?
「価値」とは主観的なもので、「価格」は客観的なものですよね。なので投資家の立場で考えたときに、プロジェクトへ出資をする価値は、その人にしか分かりません。価格という客観的な指標を見たときには、通貨は指標を数値化するためのツールなので、例えば自分が投資をしたときも客観的な数字として表れるので、分かりやすいリターンとして見ることができます。一方で主観的なリターンというのは、自分で定義するしかありません。
――以前は金銭的なリターンを求めて投資をしている人が多かったのでは。
昔に比べて出資者の意識は大きく変わってきています。以前はあらゆる判断基準や意思決定のベースになっているものは、とにかく客観的なものが多かったと思います。価格に表されるものもありますし、良い大学を出て一流企業に就職するといった、誰から見ても分かりやすいマス向けの客観視しやすいものに価値があると思われていました。しかし最近では、ソーシャルメディアなどが普及し、個人が情報を発信。個人同士のコミュニケーションの中でそれぞれの価値観が浮き彫りになってくるなかで、時によって不特定多数のマス向けのアプローチというのが疑問視をされる時代になってきています。組織中心の社会構造から個人中心の社会構造へと変化し、トップダウンで決められた硬直的な価値観に従うのではなく、ボトムアップで個人の価値観や経済活動などを動的に組み立てていくという変化をしていると思います。
――支援する案件を決める基準は何か?
金融機関として、反社会的勢力やマネーロンダリングなどは防がなければならないというルールは定めていますが、私たちが投資をするわけではないので、原則として基準はありません。私たちの原点はニーズをつなぎ合わせることなので、やりたいと考えている人に対しそれに乗っかる人のニーズが合えば、それでいいと考えています。クラウドリアルティが基準を作ってしまうと、それがひとつの価値観であり、全体を支配してしまいます。なので私たちがやりたい案件をピックアップするというよりは、相談を受けて話をしていくなかで、ニーズが集まりそうだと判断した案件を、優先順位をあげて取り組んでいきます。結果的に社会に求められていたり、社会に役立っているものが成立し、形になっていくためのお金のベースになっています。
(続く)
(プロフィール)
株式会社クラウドリアルティ
代表取締役 鬼頭武嗣氏
東京大学工学部建築学科卒業、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了。ボストン・コンサルティング・グループを経て、メリルリンチ日本証券の投資銀行部門にて各種アドバイザリー業務などに携わる。2014年、株式会社クラウドリアルティ設立、代表取締役就任。一般社団法人Fintech協会理事、革新的事業活動評価委員会委員。
(豊かな暮らしを創るコミュニティ・ペーパー「禅CLUB」2月号に掲載)