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フリーランサーに伝えたい、一人で戦うための自己防衛的営業術(Vol.5)

2020年05月29日

40歳で異業種から独立。まったくコネも実績もない状態から一人、コツコツ営業活動を続けてきた株式会社エーアイプロダクション代表・伊藤秋廣が、12年にわたるフリーランス時代の経験を交えながら、その営業術について語ります。

単なる下請けから事業パートナーへ

 

――前回の記事の最後に、フリーランスにとって“請負からの脱却”は大きな課題であるというお話をうかがいました。

 

“請負からの脱却”というのは、僕らフリーランスのクリエイターにとっては永遠の課題ですよ。ライターだったら、例えばフードライターや文房具、音楽とかスポーツライターみたいな、何らかの専門性を持って“専門家ぶる”っていう道もアリかもしれません。でも、なんちゃって専門ライターは一時的なブームが終わったら食えないし、定番ジャンルは定番ジャンルで、書きたいっていう人もたくさんいるだろうから競争過多になって、よっぽど頑張らないと生き残ってはいけない。

 

以前の記事にも書きましたが、僕はあえて“リスク分散”という観点から広く浅く、色々な分野をカバーできて、しかもコミュニケーションや傾聴力という基本的な力があれば汎用的に対応できて、なおかつ、あまり名乗っている人が少ないプロインタビューとしてキャラを立て、ある意味それが世の中だか、業界のニーズに刺さって、多くのお客様からオファーをいただいて、独り立ちして食っていけるようになりました。

 

でも逆に、明確な専門性を持っている専門家ではないから、常に“この人にインタビューしてほしい”“この人について書いて”というオファーが集まってしまう。もちろん、それはそれで本当にとてもありがたい話なのですが、お客様に依存度が高い請負体質というのは、けっして健全なものとは言い難く、相手の事情に左右されやすく、なかなか浮き沈みもあって安定しません。

 

やっぱり、こっちが主体となってコントロールできるビジネススタイルにしていかないといけないとはわかっていても、この手の仕事ってサービス化しづらいではないですか。まあ、事業化しづらいですよね。どうしても出版社や新聞社、大手WEB媒体とか編プロとか、何らかのメディアを握っている人たちに食わせてもらうという構造になってしまいがちです。

 

とはいえ、事業化したいといっても、媒体を作って販売したり、広告収入をあげたいわけでもなく、あとはSEOコンサルみたいな立ち位置で、“こういう記事を書いたら検索上位に来るよ”的なアドバイスをしたいわけでもない。SEOとかエンゲージメントにコミットするのではなく、違う価値を提供したい。ビジネスインタビューを通じて起業家の話を聞くと憧れますよね。でも僕の持っているスキルは非常に小さくパーソナルなものなのでスケールしづらいし、お金もないから資本投下もできない。

 

あるいは話をきいて文章を書いてお金をもらうという観点からすると、作家やジャーナリストみたいな道もあるかもしれませんが、まあ、狭き道ですよ。よっぽどの立場になっていけないと食ってはいけません。僕はすでに40歳で、妻も娘もいたし家のローンもあったから、長い下積みを耐えるなんていうのは許されないのですよ。最短で最適な解を見つける必要がありました。

 

そこでいったん課題を整理して、戦略というかストーリーを考えました。僕の強みは間違いなくインタビューで、そこは差別化できる自信はありましたが、超俗人的もいいところなんで、ビジネスとしてスケールしづらい。数で勝負できないのなら、広げずに深化するしかない。インタビューの専門家として仕事を極めていって、下請けではなく、お客様に提案・発信できるような立場に持って行こうと。

 

インタビューをして原稿を書くという仕事は、基本、変わらないんだけれど、相手のニーズに合わせて見せ方を変えたり、あるいは人と組んで、スチール撮影+映像+僕のインタビューみたいなプロジェクトっぽい見せ方をしたり。そんでもって、それっぽいサービスメニューとかパッケージ風に見せようと考えました。

 

そうなると資料作りにも熱が入るのですよ。誰に対しても、どこの会社に対しても一律同じく配る、汎用型のなんちゃって会社案内一種ではなく、ちゃんと相手の業種ごとに分けて考えて、それぞれにカスタマイズして「提案書」みたいなカタチに整える。要するに自分のスキルを業界ごとにカスタマイズしてハメる作業ですね。

 

既存の業界はもちろん、新しいテクノロジーと自分の知識をマッチングさせたり、業界動向を自分なりに読みながらそこに自分の実績をはめていく。「僕のスキルとかウリはこうです」「これだけの実績があるんで見てください」だけでなく、「僕のスキルは御社のこういうところに役立つんです、なぜならこうだから」と、シンプルなメッセージですよ。価値提供するよ、僕がインタビューするとこんな価値があるよって資料の中で表現していきます。

 

もはやライバルは他のライターではありません。そもそもライターやインタビュアーになじみのない、使ったことのない実業の世界に切り込んでいきますからね。社内広報とか、大手広告代理店とかとの比較軸を用意する。そういう人とはこれだけ違いがある、そこにお金を払う価値があるんだよと、そういった論法を徹底的に練り込みました。

 

ビジネスフィールドにおいても、様々な場面でインタビュースキルが求められるのは間違いない。後は、どのようにアピールしたらわかってもらえるか?伝わるか?外注の個人クリエイターを使ったことのない人にどうやって安心感を与えながらメリットを期待させるか。しかも、その上司や経営陣をも納得させるロジックも必要になります。これって組織人として重要な要素ですからね。そんなことを盛り込んでいくとどんどん営業資料がどんどん分厚くなっていきます。

 

まあ、これって一種の営業資料ですから、新規客へのアプローチツールとして使うんですけれど、既存のお客様にも“こういうの始めたんで応援してください”みたいな感じでメッセージを添えて送って、頑張っている姿っていうか、事業を作ろうとしているんだなっていう姿勢を見せるんですよ。単なる個人のクリエイターではなく、ビジネスマインドを持っているのだと、改めて印象づけすることで、相手の見方も変わってきます。ビジネスパートナー扱いをしてくれるようになって、新しいアイデアを持ってきてくれるようになりますよ。

 

もうひとつ重要なのが、あまりにもビジネス、ビジネスって強調しすぎて、いかがわしくみせないことです。なんか得体のしれない新しいビジネスっぽく見せると相手は引きます。狂信的な人を相手にする自己啓発セミナーや“誰でも本が出せますよ”的な出版セミナーとか、なんかよくわからないオレオレ自称コンサルとかではなく、ちゃんとしたビジネスパーソンに納得してもらえる見せ方をしないとダメですよね。

 

“良識的でまともなんだけれどやってることは前例がないですね”くらいなニュアンスがちょうど良い。保守と革新の絶妙なバランスというか、アイデアは新しいけれど、会ってみるとまともな人ね、みたいな、そんな演出が望ましいんじゃないかと。僕はよく、お客さんに「伊藤さんは常識人だから大丈夫」という評価を受けるんで、そういった信頼感はひとつの武器になると思っています。何事もイキすぎない、ぶっ飛びすぎないってことです。

 

あとは協業ですね。それもクリエイターではなく事業寄りの人と組む。こんなビジネスを一緒にやりませんか?一緒に社会課題を解決しませんか?その手段のひとつとして私のインタビュースキルを活用しませんか?ってノリです。専門家から専門会社っぽく進化して、こちらから専門性の高いプロフェッショナルなインタビューをサービスとしてご提供させていただきます、というスタンスで提案していきました。もちろん、前回の記事でも何度も繰り返すように、あまりにもブランディングが先行しすぎて、専門家面し過ぎるのは絶対にNG。実力が伴わない専門家は最悪ですし、もう二度とオファーこないし、口コミでダメな噂が広がって、二度と立ち直れなくなるので注意が必要。バランスよく実力を向上させる、そのために僕は現場に立ち続け、できるだけたくさんの人にインタビューをすることは継続していきました。

 

事業寄りやビジネス寄りの人にはディレクションもできますって伝えます。僕が営業兼ディレクター、プロデュ―サーみたいな立ち位置で動きますよ、御社のプロジェクトの一部として組み込んでくださいって提案する。取材もするし、原稿も書く。時には営業マンの顔で「うちのクリエイターがこう言ってます」みたいな言い方をして。そうなると徐々に大きな仕事を受けるようになってくる。だんだん本当のプロダクションっぽくなっていったんですね。

 

相手の言い値ではなく、こっちでちゃんと価格を決めて、“私たちが考えるインタビューはこういうものです”みたいな提案をしてみたいに、徐々にこっち主導のビジネスっぽくなっていきます。もちろんお客さんの仕様に合わせてサービスを提供するのは当然のことですが、下請けではなく、専門家として認めてもらって、対等なパートナーとして組めるようになってきて、ぶっちゃけ単価もあがっていきましたね。

(次回へ続く)

 

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