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シェアリングエコノミークラウドファンディング
2020年04月23日

すべての人が自由に価値交換できる金融インフラを目指す(後編)

これまでにないまったく新たなコンセプトを持った、“P2P型金融”という画期的なシステムを構築し、世界的な注目を集めているクラウドリアルティ社。同社代表・鬼頭武嗣氏が描く金融の未来とは?

――これまで手掛けてき た代表的なプロジェクトをご紹介ください。

 前号の記事で紹介のあったADDress北鎌倉の事例についてお話ししましょう。北鎌倉の古民家をリノベーションしADDressの施設に変えていくプロジェクトです。代表の佐別当さんのビジネスモデルに共感している人や、北鎌倉の物件そのものに興味を持っている人、あるいは弊社が取り組む ことが面白そうだと参加する人など、さまざまな方が出資をしてくださいました。募集開始からわずか3日間で目標額に到達。現在、物件の工事が進んでいる段階なので、その後の運用を含めた成功例とはいえませんが、クラウドリアルティらしい事例かとは思っています。単純にこの施設を金融商品として運用しているのではなく、その背後にあるADDressの戦略や佐別当さんの想い、価値観が凝縮されたプロジェクトのひとつ。注目を集めるという点でもそうですし、出資する側がコンセプトを含めて正しく理解している点も特徴的だといえます。
 数年前から、数件の京町家再生プロジェクトにも取り組んでいます。まちづくりの観点からも京町家の再生と宿泊需要がかみ合った施設というのは、京都の大きなトレンドとして伸びています。少し毛色の違う案件としては、都内の空きビルをワークスペースに変えて提供するスペイシーという会社の事業を不動産的観点から支援しています。当然、ワークスペースを作るための資金は必要なので、事業資金とは違った部分に投資をしたい人のニーズを繋げました。

――事業ではなく、不動産に投資しているので、小規模企業でも資金調達が可能になっているということですね。

 会社への出資はいわゆるコーポレートファイナンスですが、金融の世界で言えば、コーポレートファイナンスと我々がやっているアセットファイナンスに分類されています。これまでの日本社会が作ってきた金融インフラは、銀行融資などの間接金融によるコーポレートファイナンスが中心でとても偏っていました。それ以外の直接金融、プロジェクトファイナンスやアセットファイナンスは完全に置き去りで、インフラとして作りきれていませんでした。そこに一石を投じていくというのが、私たちの事業の意義です。誰もが知っている上場企業や、昔からある主流と言われている企業ではないところにも使えるものを提供していきたいですね。

――しかも、社会的意義がある物件ばかりで、投資しがいもありそうです。

 人は年齢を重ねてくると自分の価値観がしっかりしてきます。若い頃はそれが無いからこそブランド物を求めたり、何に価値を求めればいいか分からないから、とりあえずお金として日本円を持って安心するというのもあります。しかしお金はあくまでツールで、それ自体に金融の機能として以外の価値はなく、何かと交換して初めて価値として顕在化していきます。なので私は無目的にお金だけを貯めるのは、自分で価値観を作りだす前段階の一種のモラトリアムだと考えています。例えば歳を重ねて、若い世代に継承していくということ、自分が死んだあとの世界に生きていること自体に価値を見出したとすると、そういった若い世代のチャレンジに貯めてきたお金を投じていくことで、初めてそれが価値として実現されるのだと思います。そのような価値を感じられる案件をたくさん増やしていきたいですね。お金はお墓に持っていけません。お金を貯めるということは、自分の唯一の資源である時間を切り売りするなどして、それを換算したものを貯蓄していくので、それを最後にどのようにして自分の価値に転換して人生を豊かにしていくのかが大事だと思います。

――今後のビジョンをお聞かせください。

 誰でも使える金融インフラを作りたいと思っています。すべての人が自由に価値交換をできる世界というのが、私たちが目指す世界です。日本ではあまり感じられないかもしれませんが、海外では銀行口座やクレジットカードが持てない人を対象に、預金や借り入れの機会などの金融サービスを与えていくという意味で「ファイナンシャル・インクルージョン」という言葉が使われます。この点において日本は充足していますが、リスクマネーを集める側面においては不十分。いわゆる資本市場と言われる長期のリスクマネーを扱う市場へのアクセスを、すべての人に提供していくというのが大きな目標です。


(プロフィール)
株式会社クラウドリアルティ
代表取締役 鬼頭武嗣氏
東京大学工学部建築学科卒業、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了。ボストン・コンサルティング・グループを経て、メリルリンチ日本証券の投資銀行部門にて各種アドバイザリー業務などに携わる。2014年、株式会社クラウドリアルティ設立、代表取締役就任。一般社団法人Fintech協会理事、革新的事業活動評価委員会委員。


(豊かな暮らしを創るコミュニティ・ペーパー「ZENCLUB」4月号に掲載)